久野修慈学員会会長 記念講演会要旨

久野氏が白州次郎氏と出会ったのは、1970年秋、白州氏が大洋漁業(現マルハ)の社長相談役に就任した時、当時同社の社員であった久野氏を秘書に指名したのがきっかけであった。白州次郎氏は、近年彼に関する著作が多く出されたが、戦後の占領期、吉田茂首相の右腕として連合国総司令部(GHQ)と対等に渡り合った人物として広く知られている。

一方の、キューバ国首相であるカストロとは、昭和40年代、久野氏が日本経団連キューバ訪問団の一員として同国を訪れた際会ったのが最初であった。カストロは、昭和30年代、キューバ革命によって政権の座についた後、約半世紀にわたり、キューバの国家元首として君臨してきた人物であるが、何故このように長い期間、国家元首であり続けたか。その理由は、カストロが国の医療と教育に意を注いだため、同国の医者の数は先進国と比較しても多く、文盲率も数パーセントであること。権力者が市民と一緒になってキャッチボールをしている等、同首相は、例えばイラクのサダム・フセインのような独裁者ではなく、国民を大切にする。この意味で、共産主義者ではなく、人間主義者である。

白州次郎氏もカストロに共通しているところがある。それは、強者におもねることがなく、彼の目線が常に弱者にあったところである。末端で働く人々を大切にする人であった。